信州上田カメラ屋気まぐれブログ

長野県上田市の松尾カメラ店主のブログです

4×5インチ2分の1と6×9サイズの話し

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4×5インチビューカメラの最高峰ブランドsinar f2の中古

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機動性に加え、フィルム側でのアオリも可能な6×9カメラ マミヤプレスの中古

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4×5インチのポジとブローニー(6×6)のポジ

 30数年前、渋谷のコマーシャル撮影の貸しスタジオでアシスタント(スタジオマン)をしていたころ、商品撮影のフォトグラファーの或る方が、次のような変わった撮影の仕方をしておられました。4×5インチのカメラを使用しながらも、わざわざフィルムバック装着部のレンズ側左半分ににマスキングを施して撮影。次にフィルムバックを180度回転させて装着しなおし、残り半分に露出を変えたカットを撮影。1枚の4×5シートフィルムに2コマずつ写し込む…。アシスタントの立場としては口には出しませんが「6×9のロールフィルムバックで撮影すれば楽なのに」と心の中でつぶやいていました。

 当時はバブル経済の真っ盛り、コマーシャルフォトの業界が最も輝いていた時期でもありました。ほんの僅かでも品質が向上するのであれば労力やコストを惜しまない時代。印刷物の扱いが小さく、12.5㎝×10cm位ある4×5インチのサイズは必要ないものの、ロールフィルムよりもコシや平滑性、耐久性があるシートフィルムを使うことが良しとされた結果だろうと思います。

 実は、4×5インチを半分に切ったサイズがほぼ6×9判。私が子供のころ、松尾カメラの証明写真はホースマンの6×9ビューカメラで「名刺判」のシートフィルムを使用して撮影していました。名刺判は、証明写真同様、4×5インチでは大きすぎる新聞や雑誌の挿絵に丁度良いサイズでした。ところが、シートフイルムで撮影するには、火縄銃と同様、1枚シャッターを切るごとにシートフィルムを抜き差ししなければなりません。速写性が求められる現場のニーズに応え、連続的に撮影可能なシステムとして、この名刺判の幅で長いロール状のフィルムにしたブローニー判のロールフィルムを装填するカメラが開発されました。そのような進化の過程を最も強く実感できるカメラが「マミヤプレス」です。

 現在、松尾カメラの店頭には、大判ビューカメラの最高峰ブランド・ジナーのf2 4x5とマミヤプレスの90mm,150mm,ブローニーロールフィルムホルダー2個つきの中古が並んで展示・販売されています。フィルムカメラとひとことで言っても、それぞれの種類ごとにそれぞれのこだわりの進化を遂げてきており、機能や形も様々。映画の長尺フィルムを小さなパトローネにつめて、映画のコマ2コマ分で1枚の写真を撮影するシステム「ライカ判(135)」は有名ですが、それだけではない、様々なカメラの歴史に触れることが出来ることが、中古カメラの大きな魅力だと思います。

www.matsuocamera.net

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