モンゴル草原の距離感

内モンゴル四子王旗草原での撮影を終え、フフホトへと戻る準備をしていたときのこと。南の空がにわかに曇り、よーく目を凝らしてみると、地面と上空の黒雲の間に立ち上がる棒状の雲が見えました。竜巻です。
前夜の雷もそうでしたが、広いモンゴル草原ではあまり身の危険を感じません。樹木も無く、小高い丘以外には視線を遮る物がないため、実際の距離感は全くつかめないのですが、雷にしても竜巻にしても目を凝らしてようやく分かる程度。上田市で言えばおそらく「二山越えた更に先」位の出来事なのだろうと想像しました。そんなわけで残念ながら、のんびり気分でバスにカメラをとりに戻っている間に、竜巻は雲の中へと消えてなくなってしまいました。

ジンギスカン率いるモンゴル騎馬軍団がこの大地を駆け巡る情景を思い浮かべてみました。見通しの良いこの地では、遥かなたに迫りくる征服者を見つけたとき、どんな判断をするだろうか？遠くの竜巻のように、案外恐怖は感じなかったかもしれません。ある程度冷静に、どうするのが一番徳か考える余裕があったのではないだろうか。結果として流血の事態を避け、政治的な和睦の道を選んだ部族が多かったに違いない。だから前代未聞の地球的規模の巨大国家が成立したのでしょう。

いろいろな思いの中で、つかの間の内モンゴル大草原体験を終え、バケツをひっくり返したような雷雨の中バスにゆられて、フフホトへと戻って行きました。


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